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最高裁判所第二小法廷 昭和45年(オ)408号 判決 1971年4月23日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人阪口繁の上告理由について。

本件記録によれば、原審は、上告人尹が原審第一一回口頭弁論期日(昭和四四年九月九日)に提出した所論建物買取請求権に関する主張を、同第一二回口頭弁論期日(同年一〇月二三日)に民訴法一三九条一項により却下して弁論を終結し、原判決を言い渡したことが認められ、右却下の決定が右民訴法の規定の定める要件の存在を認めたうえでなされたことも明らかである。

そして、上告人尹が第一審において口頭弁論期日に出頭せず、本件建物収去、土地明渡等を含む一部敗訴の判決を受けて控訴し、原審第二回口頭弁論期日(昭和四二年九月二一日)に、抗弁として、同上告人が前借地人から地上の建物を買い受けるとともに、賃貸人の承諾を得て本件土地の賃借権の譲渡を受けた旨主張したが、被上告人ら先代においてこれを争つていたこと、その後証拠調等のため期日を重ねたが、前述のとおり、第一一回口頭弁論期日にいたつてようやく建物買取請求権行使の主張がなされるにいたつた等本件訴訟の経過によつてみれば、右主張は、少なくとも同上告人の重大な過失により時機におくれて提出されたものというべきである。原審においては二度和解の勧告がなされたが、口頭弁論期日もこれと平行して進められたのみならず、和解の試みが打ち切られたのちも、第八回以降の口頭弁論期日が重ねられ、上告人尹において十分抗弁を提出する機会を有していたことから考えると、和解が進められていたから前記主張が提出できなかつたという所論は、にわかに首肯することができない。

つぎに、本件記録によれば、所論建物買取請求権の行使に関する主張は、被上告人らが借地法一〇条所定の時価として裁判所の相当と認める額の代金を支払うまで、上告人らにおいて本件建物の引渡を拒むために、同時履行等の抗弁権を行使する前提としてなされたものであることを窺うことができるが、所論指摘の各証拠によつては到底右時価を認定するに足りるものとは認められず、かくては右時価に関する証拠調になお相当の期間を必要とすることは見やすいところであり、一方、原審は、本件において、前述のように右主張を却下した期日に弁論を終結しており、さらに審理を続行する必要はないとしたのであるから、ひつきよう、上告人尹の前記主張は、訴訟の完結を遅延せしめるものであるといわなければならない。

それゆえ、原審が右主張を民訴法一三九条一項により却下したのは相当である。最高裁判所昭和二八年(オ)第七五九号同三〇年四月五日第三小法廷判決(民集九巻四号四三九頁)は、事案を異にするので、本件に適切ではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小川信雄 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一 裁判官 岡原昌男)

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